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INTERVIEW

指導医インタビュー

診療時の引き出しを増やしたいのならば、ぜひ地域医療にチャレンジを

練馬光が丘病院 副管理者 兼 外科部長吉田 卓義

このページに掲載されている情報は2020年01月27日取材当時のものです

練馬光が丘病院 副管理者 兼 外科部長

吉田 卓義

1991年に自治医科大学医学部を卒業後、埼玉県で9年間、地域医療に従事。2000年より、自治医科大学附属さいたま医療センターで勤務したのち、地域医療振興協会の運営施設である東京北医療センターへ。2012年、練馬光が丘病院の運営を地域医療振興協会が行うに当たり、立ち上げメンバーとして同病院に異動し、現在に至る。


1冊の本から始まった医師としての歩み

幼い頃に読んだアルベルト・シュヴァイツァーの伝記が、私の人生を、そして医師としての方向性を決めたと言っても過言ではありません。アルベルト・シュヴァイツァーは、神学者、哲学者、そして医師など、さまざまな顔を持ち、各方面で功績を残したドイツ出身のアルザス人です。彼は38歳で医学博士の学位を取得し、当時、医療施設に困っていたアフリカにあるガボン共和国で、現地の住民へ医療活動を行いました。こうした彼の功績を知った私は、小学生の頃には医師への憧れを抱き、医療が充実していない土地での医療活動に興味を持っていたように思います。
一方で、中学生の頃には、高校へは行かず航空学生となって、戦闘機のパイロットを目指すことも考えました。しかし、その夢は親に反対されたために断念し、高校入学後は野球に明け暮れましたが、最終的に医師を目指し始めました。

さまざまな価値観を受け入れ、それぞれにあった指導方法を考えている

私は、小学生から高校生の終わりまで、ずっと野球を続けていました。高校の部活ではキャプテンも務めましたが、このときの経験こそが、私を大きく変えるきっかけとなったのです。
当時、どちらかといえばストイックな気質だった私は、自分自身が手を抜かずに練習することはもちろん、ほかの部員たちにも同様の姿勢を求め、手を抜いている部員がいれば、声を荒げてしまうこともありました。しかし、全員が同じ温度で野球部を続けているわけではなかったため、私と部員の温度差は広がる一方でした。そしてついに、部員全員が私とでは部活を続けて行くことは出来ないと言い出す事態へと発展してしまいました。最終的には話し合いを通して互いの考えを理解しようと努力し、歩み寄ることで解決することができましたが、この出来事はいまだに忘れられません。
私はこの経験を経て、さまざまな考えの人がいるのだということを、それまで以上に意識するようになったのです。こうして言葉にすると当たり前のことだと感じますが、実際に、自身と異なる価値観の人に出会ったとき、互いにどう理解を深め、どう歩み寄り、そしてどう相手を受け入れていくかということがいかに重要かを思い知りました。
また、自治医科大学入学後にはラグビーを始めました。当時のラグビー部監督で、私の恩師でもある加賀美先生は、日ごろから「ラグビーを通して医療関係者以外の人々と交流し、一般常識のある、バランスの取れた医師になれ」と仰っていました。私もそれに倣い、今でも休日はレフリーとしてラグビーの試合に参加し、医療関係者ではない方々との交流の場も大切にしています。
こうしてさまざまな価値観を持つ人と接し、異なる価値観を受け入れていく重要性を知れたことは、現在、後進の指導をするに当たっても非常に役立っていると感じます。近年、医師の働き方に注目が集まっていますが、実際には働き方のスタンスも人それぞれです。若くて元気なうちに、多少無理をしてでも、医師としての成長を追い求めたいという人もいれば、ワークライフバランスを重視したいという人もいます。指導時には、こうした多様性を受け入れ、性格なども鑑みたうえで、それぞれに合った指導ができるよう、心がけています。

地方でも一定レベルの医療を提供できるようにするための研修を

当院では、地域医療振興協会が運営する東京ベイ・浦安市川医療センター(以下、東京ベイ)を基幹施設とした3年間の外科専門研修プログラムを用意しています。当院での勤務だけでなく、3年間のうち最低6か月間は東京ベイに出向して研修を行うことになっています。
当院の外科専門研修プログラムの特色は、なんといっても症例数にあり3年間で最低でも450例の執刀を目標として定めています。この研修の目的は、さまざまな症例に対して経験を積むことで、ほかに頼る病院がない僻地の50床~100床規模の病院でも、安全かつクオリティを保った手術を実施できる医師として育てることです。また当院は、年間救急車受け入れ台数が7500台を超えており、急性期疾患の症例も一定数経験することができます。
そのほか、鏡視下手術も積極的に導入しています。結紮や縫合から始まり、段階的なトレーニングを行い、技術レベルの向上を図ります。年2~3回ほど、外部でトレーニングを行ったり、症例数の多いハイボリュームセンターで短期研修を行ったりすることも可能です。
加えて、地方病院の外科医は手術だけではなく、ドレナージやイレウス管の挿入、上部・下部内視鏡検査といった、消化器内科的な処置を行う機会もあります。そのようなシーンにも対応できるよう、手術以外の消化器内科的な処置を外科が行っている点も、当院の特徴です。内視鏡検査については、例えば1年間は、特定の曜日に手術ではなく内視鏡検査のみを実施するなど、他科の協力を得て、手技の習得を促しています。
こうした研修を通して、研修医の皆さんの頭にある引き出しを増やし、自信を持って診療ができるようになってもらえたらと考えています。外科医としての専門性ももちながら、風邪や心筋梗塞、骨折など、あらゆる患者さんの初療に対応できる医師を目指したいという方には、特におすすめしたいですね。

練馬区に不可欠な病院となるために

練馬区は、人口10万人当たりの一般・療養病床数が東京23区で、最も少ない区です。そうした環境の中で、当院は練馬区や区西北部エリアを中心とした地域の急性期医療の充実に努めています。これからますます高齢化が進むことを考えると、当院周辺の地域における医療需要は増大することが見込まれます。
この状況を踏まえ、当院は現在、移転・改築に向けて動き始めています。現在の病床数は342床ですが、新病院では100床ほど増床する予定です。病院の移転・改築により、今まで以上に多くの患者さんを受け入れることが可能となります。練馬区に不可欠な病院となることを目指す当院で働くことは、大きなやりがいにつながるのではないかと思います。

地方の病院で働くことで見えてくる、自分の実力

外科専門研修プログラムでは、東京ベイのほか、3か月~6か月間は地方の病院に出向することが決まっています。地方の病院で直面するのは、たとえ研修医という立場であっても、診療をする人間が自分一人しかいない、という状況です。そのような場に身を置き一定期間診療を行うことで、自分が本当にできること、できないことが浮き彫りになり、自分の実力が見えてくるのではないかと思います。また、上司や先輩がいない状況では、診療に対する自身の責任が重くなるため、医師としての自覚がよりいっそう強くなる研修医も多くおります。地方の病院での診療を通して、自分自身の実力をしっかりと認識できること、そして医師としての自覚を強められることもまた、本研修の大きな意義ではないでしょうか。

メッセージ

地域医療に興味があるという人はもちろんのこと、ぜひ、医師としての実力をつけたい人にも、地域医療振興協会の研修プログラムをおすすめしたいです。特定の疾患に対して、専門的で高度な手術をすることだけが、外科医の仕事ではありません。診療の幅が広く、あらゆる場面に対応できる外科医もまた、必要とされています。さまざまな外科系の患者さんがいらっしゃる当院で、いくつもの症例を経験し、診療の幅を広げてもらえればと思います。