JADECOM アカデミー 公益社団法人 地域医療振興協会 医師採用

INTERVIEW

指導医インタビュー

地域医療振興協会には、地域の最前線での診療と世界最先端の研究を両立できる環境がある

君津市国保小櫃診療所 管理者 兼 診療所長望月 崇紘

このページに掲載されている情報は2020/05/15取材当時のものです

君津市国保小櫃診療所 管理者 兼 診療所長

望月 崇紘

2008年4月より総合診療科医師としてのキャリアをスタートし、同年12月には山北診療所の所長を務めた。その後、東京北医療センター救急科での勤務を経て、2017年10月から2年間オレゴン健康科学大学に留学し、多施設で行う臨床研究ネットワークについて学ぶ。現在は、地域医療振興協会に所属する施設の臨床研究ネットワークを用いたアドバンス・ケア・プランニングに関する研究を行いながら小櫃診療所の管理者、診療所長を務める。

診療所同士の研究ネットワーク『PBRN』を学びにアメリカへ

前回取材を受けたときは、ちょうどアメリカ留学へ行く直前だったと記憶しています。私は、2017年から2年間、地域医療振興協会の海外研修制度を利用して、オレゴン州にあるオレゴン健康科学大学(以下OHSU :Oregon Health & Science University)に留学していました。留学期間中の主な目的はPBRN(Practice Based Research Network)について学ぶことで、それを日本へ持ち帰り、地域医療振興協会の所属施設でPBRNを立ち上げるということが私のミッションでもありました。
PBRNとは、多数の診療所が連携して研究を行うネットワークを指し、アメリカを中心とした海外では非常に発達しています。それぞれの診療所が各々研究を進めるよりも多施設共同で研究を進めるほうが効率的で、今後のプライマリ・ケアの研究においては、そうしたシステムが大変重要になってくるといわれていますが、日本ではまだネットワークの数が少ないのが現実です。留学中には、PBRNをどのように立ち上げ、運営するのか、どのように活用して研究を行うのかという点を中心に学びました。

留学を経て実感した日本における研究体制との違い

研究面に関して、留学中に感じた日本との大きな違いが二つありました。一つは、研究費の規模の違いです。アメリカでは、PBRNを活用したプライマリ・ケアベースの研究が非常に盛んで、それに対して国も莫大な研究費を投じます。日本で同等の研究費を確保するのはかなり非現実的であり、アメリカの研究を見てまず初めに思ったことが、「これをそのまま真似るのは無理だ」ということでした。一方で、お金をかければ必ずしもいい研究になるかといわれれば、決してそうではないと思うのです。そもそもの研究のアイディアがよければお金をかけずともよい研究になり得ると思っていますし、そうやって研究を積み重ねていくことに意義があるのではないかと考えています。
もう一つのアメリカと日本における研究体制の大きな違いは、誰が主体となって研究を進めていくかという点です。日本ではMD、いわゆる臨床医が診療と両立しながら研究を行い、論文をまとめるというケースが多いですが、アメリカでは臨床医はあくまでもアイディアを出す役割ということが多く、中心となってその研究を進めていくのはPhD(医学博士)でした。これが日本との決定的な違いです。そのためPBRNにおいても、ほとんどの研究を医師ではなく研究者たちが進めていたので、そういった点も効率的だなと感じました。

研究面や生活面における価値観の変化

そのほか、今後日本で臨床を続けていくうえで、エビデンスの読み取り方にはよりいっそう注意しなければならないと思うようになりました。当然、初めにEBMについて習うとき、海外のデータをそのまま日本に当てはめられるわけではないと教わってはいました。ただ、アメリカでの生活を経て、それを肌で感じることができた気がします。あくまでそれらは、アメリカの医療制度や白人を中心とした文化の下で出されたエビデンスであるということを、本当の意味で理解することができました。
また、プライベートの面でも人生観が変わるような経験の連続でした。単なる旅行ではなく2年間アメリカで生活したからこそ、日本の高齢化をより実感したり、アメリカのフレキシビリティの高さに圧倒されたり、ITをどんどん生活に取り入れていく姿勢を目の当たりにしたりすることができたのだと思います。加えて、これまでは自分の考えを伝えるための言語の面で苦労したことはありませんでした。しかし、渡米時にはいわゆる受験英語しかできない状態だったため、現地の方々となかなかコミュニケーションが取れずに苦労しました。それでもオレゴンには親切な方々が多く、たくさんの方に手助けをしてもらったので、そのありがたみをひしひしと感じる場面がたくさんありました。

地域医療振興協会の国際交流事業の橋渡しという役割

留学中は、地域医療振興協会が行っている国際交流事業の橋渡しも役割の一つでした。地域医療振興協会では、医学生や研修医、指導医向けに研修機会の提供や支援を行っており、地域医療のススメのシニアレジデントであれば1~2か月OHSUで学ぶことを選択できます。また年間派遣人数に上限はあるものの、派遣を希望した指導医の方も2週間単位でOHSUに行くことができます。こうして日本から派遣された方々に対して、事前準備として日米の違いを伝える、どんな研修が行われる予定なのか説明を行う、OHSUから日本に派遣される方に同行して日本でおもてなしをするといった仕事を通して、地域医療振興協会をより深く知ってもらうことに注力していました。
今後も、国際交流事業のサポートは続けていく予定です。特に私と同じように数年単位で留学する場合には、渡米後に車や携帯電話の購入、保険や税金、子どもの学校はどうするのかなど、想像以上にさまざまな手続きが必要になります。これは非常に大変な部分でもあるので、そうした面でフェローのサポートができればと思っています。

JADECOM-PBRNの立ち上げと現在の研究

渡米してから1年ほどかけてどのようにPBRNを運営していくのかについて学んだ後、2018年6月、地域医療振興協会に所属する診療所で構成されたネットワーク、JADECOM-PBRNを立ち上げました。JADECOM-PBRNは、アメリカのAHRQ(医療研究・品質調査機構)という公的機関にも承認されています。立ち上げの際には一時帰国をし、ネットワークに登録する約40施設の方々とどのような研究に興味があるか話し合い、研究テーマについて投票を行いました。その結果、JADECOM-PBRNを利用した研究の第一弾として『アドバンス・ケア・プランニング』をテーマにした研究を行うことが決定したのです。そこから研究計画を練り始め、実際のデータ収集などについては2019年の4月から6月にかけて行いました。また、そのデータを研究の途中経過としてポスターにまとめ、同年11月にNAPCRGという北米家庭医療研究の中心となる学会で発表を行いました。
現在は週に4日、君津市国保小櫃診療所で管理者兼診療所長として地域の方の診療を行いながら、週に1日は研究およびJADECOM-PBRNの運営に関する仕事をするという時間をいただいており、データを論文にまとめている段階です。こうして、新たな取り組みが一つひとつ形になっていく点に充実感や楽しさを感じています。

着々と進むJADECOM-PBRN活用研究の第二弾

現在、私が留学したのと同様に、西村 正大先生がフェローの第二弾としてOHSUに留学をなさっています。西村先生は『診療の質改善(クオリティインプルーブメント、以下QI)』について学んでいます。アメリカではEBMと同じくらい認知されている言葉ですが、日本においてはまだまだ取り組みがなされていない部分だと思います。正直なところ、地域医療振興協会に所属する診療所でも、診療の質は各施設に委ねられています。だからこそ、JADECOM-PBRNを活用しながら協会としてQIに取り組むべく、研究第二弾のテーマは『ベンゾジアゼピン系薬剤の処方適正化のためのQI活動』としています。
私が中心に進めている『アドバンス・ケア・プランニング』に関する研究はJADECOM-PBRN活用の第一弾ということもあり、登録40施設のうち4施設のみのデータをまとめていますが、第二弾では研究の対象(参加施設)を10施設まで増やしています。
今後、電子カルテネットワークなどを構築することで、JADECOM-PBRN登録施設のデータを自動収集し、各施設に所属する先生方の負担を増やさず、多くの施設のデータを用いた研究ができるようになっていけばと考えています。

+αを欲する人にチャンスが与えられる環境

家庭医療専門医を取得した後に、さらに臨床と研究を並行して続けたい方は一定数いると思います。そうしたとき、地域医療振興協会では研究ができないから大学の医局へ行くしかない、という状況にしないためにも、臨床と研究を両立できる環境を協会として整えていくことが今後の大きな目標の一つです。地域医療振興協会は教育に興味があれば後輩への指導ができますし、研究がやりたいと思えば、それも実現可能です。さらに私自身が現在診療所の立ち上げを行っているように、病院や診療所の新規立ち上げや経営のノウハウを実際に経験するなかで学びたいという場合でも十分それを叶えるチャンスがあります。私の場合、週4日の臨床では地域医療の最前線を走る一方で、研究においても世界の最先端を学び、海外の研究者たちと肩を並べてディスカッションするということを実現しています。このように地域の最前線と世界の最先端、どちらも経験することができるというのは地域医療振興協会の大きな魅力です。
地域医療に関心がある方はもちろん、臨床だけではなく+αで何かを学びたいという方は、ぜひ地域医療振興協会へと飛び込んでみてください。