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INTERVIEW

指導医インタビュー

よりよい「多角的視点で患者を診る総合診療」を、共に目指そう

市立奈良病院 総合診療科森川 暢

このページに掲載されている情報は2019年07月08日取材当時のものです

市立奈良病院 総合診療科

森川 暢

2010年、兵庫医科大学医学部卒業。神経内科医を目指していた初期研修医時代に、患者を多角的視点で診ることがよりよい医療に結び付くと考え、総合診療を学ぶことを決意。周りに総合診療医がいる環境に身を置くうちに、自然と総合診療医への道を選択する。2016年、東京城東病院総合内科チーフに就任する。2019年4月から、市立奈良病院にて総合診療に従事。総合診療プログラム「地域医療のススメ」“奈良”プログラム責任者。


多角的視点から患者さんをみつめる総合診療に興味をもつ

医学生のころ、変性疾患に興味があった私は、神経内科医を志していました。初期研修医のとき、感染症が疑わしい発熱患者に対してどのようにアプローチすべきかが全く分からず愕然としたことがあります。頭を抱えた私は、青木眞先生の「レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版」という本を先輩から勧めて頂きました。すると、「感染症診療において重要なのは、CRPなどの検査所見ではなく、病歴や身体診察である」と書かれていたのです。
「こんな考え方があるのか。」
病歴や身体診察に興味を持った私は、よりよい神経内科医になるために、総合診療を研修して医師としての基礎固めをしようと考えたのです。
そして2012年、京都の洛和会 丸太町病院で、後期研修医として総合診療に携わることになりました。ここで私は、恩師である上田剛士先生と出会い、上田先生から直接、総合診療を学ばせていただくことに。
上田先生とは、疾患や検査のエビデンスが網羅的に記載されている「内科診断リファレンス」という本を、ほとんど1人で執筆された方です。私が上田先生のもとにいたときは本を出版される前でしたが、当時から幅広い知識と経験に基づいた診療を実践されていて、とても憧れました。これが、神経内科医から総合診療医を目指すことになった理由の1つです。
もう1つは、関西の若手医師が集まって総合診療や集中診療を学ぶ「関西医師フェデレーション」という勉強会へ参加していたことです。若手総合診療医に囲まれて勉強をしていると、気がついたときには、自然と総合診療医を目指していました。

病院における家庭医療学を意識するように

病院における家庭医療学を意識するように総合診療医として働く病院を選択するときに、最初に思いついたのは、私の地元でもある市立奈良病院でした。しかし、ある日、現在獨協医科大学の主任教授に就任されている志水太郎先生から、
「東京の病院で総合内科を立ち上げるから、一緒に働かないか?」
と、声をかけていただいたのです。
志水先生は「関西医師フェデレーション」を立ち上げ、初代代表をされていた先生で、個人的に交流がありました。いつか志水先生と働いてみたいと思っていたこともあり、誘っていただいたときは「チャンスだ!」と感じました。
私は地元の奈良市に愛着があり、少なくとも関西から出るつもりはありませんでしたが、東京城東病院へ行くことを決意。2015年より、志水先生が立ち上げた東京城東病院の総合内科で、診療にあたることになりました。
ここでは家庭医療を専門とする同僚がいたので、次第に私も家庭医療に興味を持ち始めました。また、同時期に日本プライマリ・ケア連合学会の若手医師部会の執行部になる機会も得て同年代の家庭医と交流を深めました。そして東京城東病院で働き始めてから1年が経過すると、総合内科のチーフを務めることに。当時まだ医師7年目の私はプレッシャーと不安に耐えながら、なんとか現場を回していました。
そのような中で一つの転機がありました。東京城東病院での地域包括ケア病棟の開設です。家庭医療に触れ、病院にこそ家庭医療を取り入れたいと考えていた私は、ご自宅に戻られることに時間を要する患者さんのリハビリテーションや、社会的な調整、さらに緩和ケアに使用するなど、地域包括ケアの要として地域包括ケア病棟を活用することに決めました。
「患者さんを総合的に支える」
この地域包括ケア病棟の活用した経験から、より「病院における家庭医療学」を意識するようになり、志水先生が立ち上げた「総合内科」の標榜を、「総合診療科」に変更したのです。

2019年からは地元、市立奈良病院に着任し地域医療振興協会の一員となりました。後期研修で丸太町病院にいたときから交流があった、奈良市立都祁診療所の西村正大先生に誘っていただいたことがきっかけで、現在は慣れ親しんだ奈良の地で総合診療を実践しています。

地域医療振興協会と「地域医療のススメ」の魅力

地域医療振興協会は「地域医療のススメ」専攻医の育成に熱心

地域医療振興協会は総合診療医、特に家庭医の育成において、日本で最も歴史と実績がある組織です。基幹プログラムである「地域医療のススメ」の専攻医に対しては、本部に専属のスタッフを配置するほど積極的にバックアップしており、『地域医療振興協会全員で、「地域医療のススメ」専攻医を育てるぞ!』という熱意を感じます。また専攻医同士、そして指導医と専攻医全体、更には指導医同士の交流会なども度々開催されており、これもモチベーションのアップにつながっています。

「地域医療のススメ」は自分に合う研修施設を選択できる

「地域医療のススメ」の魅力は、全国にある研修施設から、好きな地域を選択できることです。都心にも、へき地にも研修施設があり、地域性の違いを肌で感じることができるでしょう。
また、ご自身が学ばれたい分野からも研修病院を選択することができます。「地域医療のススメ」プログラムの基幹病院である、台東区立台東病院、東京北医療センター、市立奈良病院の3つの病院で例をあげましょう。この3つは、それぞれ地域に根差した特色ある医療を提供しており、台東区立台東病院は老年医学、東京北医療センターはEBM、そして市立奈良病院は、臨床推論とERに注力しています。
特色ある研修施設はほかにもたくさんありますので、皆さんが希望する環境で研修ができるのではないかと思っています。

市立奈良病院の魅力

2019年6月から市立奈良病院では、診断学の勉強として、実際の症例に対してカンファレンスを行う臨床推論カンファレンスを実施しています。今後も根付かせたい取り組みのひとつです。全科救急を総合診療医が担う環境でファーストタッチを行い、病棟管理まで継続的に診療することでHospitalistとER physicianとしての経験が積めます。市立奈良病院を取り囲む環境もひとつの特徴です。市立奈良病院は、歴史と文化を誇る奈良市の中心部に位置しており、付近には、奈良駅や、緑に恵まれた奈良公園があります。私はこの環境がとても気に入っていて、当直明けにはよく奈良公園を散歩してリフレッシュしています。

総合診療に関心を持つ研修医へのメッセージ
「共に総合的に診る力を養おう」

地域医療振興協会の本部が責任を持って「地域医療のススメ」プログラムを運営している点、そして全国にいる指導医たちが熱意をもって研修医を育てるという点は、「地域医療のススメ」の大きな魅力です。総合診療や地域医療に興味がある方であれば、ぜひ受けていただきたいプログラムです。

総合診療は、患者さんの病気だけではなく、患者さんの背景までを総合的に診る医療です。
心理的な問題、家庭的な問題、社会的な問題など、患者さんを取り巻く、多くの問題を総合的に理解し、解決策を見出すことも、総合診療医の仕事です。市立奈良病院には日本プライマリ・ケア連合学会が認定する家庭医療専門医が3名もいるということもあり、市立奈良病院にきて、このように感じました。
「よりよい総合医療や地域医療などを志す人と、共に働く環境は、とても働きやすい」と。
総合診療や家庭医療に興味がある方は、同じ目標を志す医師たちが集う「地域医療のススメ」で、互いに高め合いながら、人と地域を総合的に診る力を養いましょう。

総合診療に関心を持つ研修医へのメッセージ「共に総合的に診る力を養おう」