JADECOM アカデミー 公益社団法人 地域医療振興協会 医師採用

INTERVIEW

指導医インタビュー

総合内科的視点の習得で、内科医としての安定した土台作りを

練馬光が丘病院 副病院長新井 雅裕

このページに掲載されている情報は2020/06/09取材当時のものです

練馬光が丘病院 副病院長

新井 雅裕

1987年、東京大学医学部卒業後、同附属病院および小平記念東京日立病院で研修医として経験を積む。東京大学第一内科に入局後、東芝中央病院で消化器内科医としてのスタートを切ったのち、大学に戻り、診療、研究および教育に従事。1996年から2年間、アメリカのノースカロライナ大学にて、肝臓移植に関する研究を行った。帰国後は、診療科再編成により東京大学消化器内科所属となり、診療、研究および教育にあたった。2004年東芝病院(東芝中央病院から改称)に転出。2012年より病院長を務めたのち、同院閉鎖に伴って2018年練馬光が丘病院へ移り、現在に至る。

ふとしたときに戻りたくなるような場所、原点と思えるような場所でありたい

当院での研修を通じて医師としての基礎を作り上げてほしいということが大前提にありますが、それに加えて、後々戻って来たくなるような、そんな居心地のよい場になれればということは常々考えています。
私は医師になってから3、4年目の、消化器内科医としての一歩目を東芝病院(当時、東芝中央病院)で過ごしました。指導を受けながらも、若手だからと制限されることなく検査や治療を行い、多くの症例経験を積むことができました。さらに、病棟や医局、コメディカルの雰囲気もよく、病院全体のイベントも数多くあったことなどから、とても楽しい2年間を過ごさせてもらいました。当時は1年の専門研修で早く大学に戻り、研究に従事しなさいという雰囲気がありましたが、私は臨床が好きだったこともあり、研修期間を延長してもらったのです。当時の院長にはゴルフに連れて行っていただくなど、プライベートでもかわいがっていただいたことも重なって、私の中では東芝病院に対する愛着が強く湧いていました。その後、大学で勤務を続けるなかで、より臨床に比重を置いて仕事をしたいという思いが強まり、東芝病院に戻ることを決めました。こうした経験から、医師にとって臨床研修医、専攻医としてスタートを切る場所は、とても想いが深い場になると感じています。私にとっての東芝病院のように、練馬光が丘病院で研修をする医師にとって、当院が戻って来たくなるような場所になればいいなと思います。学びや成長の場としてはもちろん、楽しく居心地のよいところになるよう、環境を整えたいと思っています。

どんな道に進むとしても役に立つ、内科医としての土台作りを

私たちの頃には臨床研修制度はなく、卒業前に進む診療科を選択する必要がありました。私自身は全身管理ができる診療科を希望して内科を選択しました。当時の東京大学には、第一から第四内科、その他に神経内科、物療内科、老年病内科があり、第一から第四のいわゆるナンバー内科にはほぼ全ての臓器別研究室がそろっているという、大内科制をとっていました。内科の研修医は、複数の内科をローテーションし、2年後に入局する内科と研究室を決定します。私は元々研究志向が強くなく、なんでも診ることのできる『お医者さん』になるイメージしかなかったのですが、大学に残る場合には研究室、すなわち専門臓器を決める必要があるため、肝臓を専門に選びました。当時、総合診療という概念にはあまりなじみがありませんでした。ただ、この頃は各ナンバー内科にはさまざまな疾患の患者さんが入院し、医局全体カンファレンスでは、全ての臓器の専門グループが集まって症例を検討していましたので、ジェネラルに学べる環境がありました。その後、大学の医局が大内科制から臓器別に再編成され、各専門診療が進歩したことも加わって専門志向が強まる一方で、総合的に診療を行う総合内科や総合診療科がその意義を高めてきました。その後開始された臨床研修制度では、初めの2年間のうち内科の必修期間は6か月にとどまります。さらにその間、臓器別診療科のローテーションで過ごす場合もあるため、内科医になる場合でも、総合的な内科診療を経験せずに臓器別専門診療に進むことも珍しくありません。高齢化が進み、1人の患者さんが多臓器にわたってプロブレムを有するようになっている昨今では、『内科医』としての教育が不十分なのではと感じることがあります。臓器別のスペシャリストを目指す方にとっては特に、内科専攻医研修において、ジェネラルに学ぶことは非常に重要だと思います。

豊富な症例が経験できる内科専攻医研修プログラム

当院の内科専攻医研修プログラムの強みは、数多くの症例を通して総合診療科で『全身を診る』ことについて学べる点だと思います。練馬区は東京都の中でも医療供給が少ない区であり、300床を超える病院は当院のほかに1つしかありません。必然的に当院には多くの救急車が集まり、2018年度には救急搬送数が7,700を超え、walk inの方も含めると年間20,000件を超える救急症例がありました。当院ではその初療をER専属の医師が行い、そこから年間1,400件ほどの内科系入院が発生します。吐下血や総胆管結石性胆管炎等内視鏡治療が必要な方、狭心症、心筋梗塞などカテーテル診断・治療が必要な方は、それぞれ消化器内科、循環器内科が診療しますが、救急入院患者の多くは総合診療科が対応し、必要に応じて臓器別専門診療科へのコンサルトや入院引き継ぎなどの対応がとられます。一方、臓器別診療科では、各科外来からの予定や緊急の入院を中心に臓器別に特化した入院診療が行われます。当院の内科専攻医プログラムでは、専攻医の希望に応じて、総合診療科、各専門診療科での研修ローテーションを調整します。総合診療科で経験する救急入院患者さんの多くは、多臓器にわたるプロブレムを有しているため、『全身を診る』ことについて学ぶ場として最適であると考えています。さらに、総合診療科での研修では、ICUでの集中治療の研修およびERでの初療の研修を行うこともできます。現在、当院で研修中の専攻医は全員、総合診療科を希望していますが、専門診療科を希望する専攻医についても、総合診療科での研修は貴重な学びの場になると確信しています。

地域での実践トレーニングが積めるプログラム

当院の内科専攻医プログラムでは、3年間のうち合計で1年間、連携施設で研修をしてもらいます。3か月間の4期に分け、各年次で1期は地域医療振興協会(JADECOM)内の連携施設に出向します。その多くは、地方にあるやや小規模で、より地域に密着した病院です。そして、そこで本格的な地域医療の経験を積みます。地域医療の現場が、当院で研修した内容を実践する場であり、次の課題を認識する場でもあります。都内の医療機関におけるプログラムでは、同一規模かつ同じく都内にある医療機関同士が連携施設となることも多く、本格的な地域医療を学べるプログラムが少ないなかで、貴重な体験が可能なプログラムと考えています。また、残りの1期は、2年次ないし3年次に同様の地域医療研修の選択に加えて、東京大学や自治医科大学附属さいたま医療センターのような、より高次な医療機関や地域医療振興協会内の都心の研修病院での研修を選択することとしています。2021年度からは、研修先の選択肢として東京医科歯科大学も加わる予定です。複数の医療機関を経験し、多くの先輩医師に出会うことで、専攻医研修修了後の進路や先々のキャリアプランを検討する際の参考にすることもできます。

人間的な成長も大切に

内科専攻医の研修中には、医療の土台を固めることはもちろん、人間的にも成長して、患者さんやご家族とよい関係を築き上げられる医師になってもらいたいと思います。患者さんの背景はさまざまであり、考え方、治療に向き合う態度なども非常に多様です。専攻医の皆さんが、これまでに相対したことのないような方々もいるでしょう。さらに、私自身、最近痛切に感じますが、年齢を重ねることに伴う体調や考え方の変化もあります。自分が最善と思う対応が、その患者さんにとって最善とは限りません。医療は誰のものかをよく理解し、患者さんにとって何がよい方法なのか、ご本人やご家族も含めて一緒に考える。主治医として期待されることも多い内科医には、そのような能力も必要です。医療に限らず、より多くの経験を積んで、人生の幅を広げてもらいたいと思います。
最後に、内科専門医のキャリアには多くの道があり、途中で切り替わることも少なくないでしょう。総合診療を目指す方にはもちろん、臓器別の専門診療を目指す方にとっても、内科医としての基礎を作っておくことはとても重要です。それが可能な当院プログラムに是非チャレンジしてみてください。