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REPORT

場所:Oregon Health & Science University 
研修期間:2019/06/01~06/08

このページに掲載されている情報は2019/06/01~06/08取材当時のものです

2019年度 OHSU地域医療視察研修 研修記


2019年度OHSU地域医療視察研修を実施しました

Oregon Health & Science University(以下、「OHSU」とする)は、アメリカ西海岸オレゴン州最大の都市ポートランドに所在する医学校であり、オレゴン州の地域医療において重要な役割を担っています。
当協会の会員支援委員会では、OHSU Family Medicine(以下、「OHSU FM」とする)の協力のもと、正会員を対象に、視察を中心としたツアー型グループ研修を毎年実施しております。本研修は「地域医療」に焦点を当てており、米国の遠隔地の医療現場を目の当たりにできるのが大きな特徴です。
第3回目となる今回は、正会員7人にご参加いただきました。昨年度に続き、ポートランドから東へ320マイル(東京・大阪間相当の約514km)移動し、オレゴン州北東部の町エンタープライズを訪問しました。

2019年度OHSU地域医療視察研修を実施しました

参加者集合写真(オレゴン州北東部の町エンタープライズにて)

研修1日目(成田→ポートランド)

ポートランドへ

ポートランド空港に到着後、今回担当されるOHSUスタッフとの顔合わせを兼ねてランチを取り、その後は自由行動としました。この時、ポートランドでは年に一度のお祭りRose Festivalが開催されており、夜には煌びやかなパレードを観覧することができました。

クラフトビールで乾杯!

クラフトビールで乾杯!

Starlight Parade

Starlight Parade

研修2日目(ポートランド近郊)

フィールドワーク

この日は終日ポートランド近郊の視察を行いました。

Multnomah Falls

Multnomah Falls

Mt. Hood

Mt. Hood

Multnomah Fallsは、オレゴン州とワシントン州の間を流れるコロンビア川沿いにある滝で、ポートランドを訪れる人の多くが足を運ぶ、観光名所です。2年前、山火事により周囲の木々が焼けるなどの被害がありましたが、現在は美しい緑が広がっています。
Mt. Hoodはオレゴンのシンボルともいえる山で、標高は富士山より少し低い3,429mです。山頂から中腹にかけては1年中雪に覆われており、夏でもウィンタースポーツが楽しめます。

研修3日目(ポートランド→エンタープライズ)

エンタープライズへ

この日は、ポートランドを発ち、約500km離れたオレゴン州北東部の町エンタープライズを目指します。インターステイトと呼ばれる州間高速道路を東へ進むと、景色は刻々と変わり、見渡す限りの平原が広がります。小さな町と町の間には広大な農場や牧場が散見され、アメリカ大陸の広大さが感じられました。

大型バンで移動

大型バンで移動

ペンドルトンの展望台にて

ペンドルトンの展望台にて

Winding Waters Clinicスタッフとの顔合わせ、出張診療所見学

エンタープライズにて

エンタープライズにて

ワローワ湖

ワローワ湖

エンタープライズは、オレゴン州ワローワ郡の郡庁所在地にあたります。ワローワ郡の面積は約8,164㎢と日本の静岡県や兵庫県に匹敵する広さですが、人口はわずか7,000人ほどです。65歳以上の高齢者は25%程度で、また、34%が米国の平均所得を下回る低所得者です。
Winding Waters Clinic(以下、「WWC」とする)の所長Dr. Elizabeth Powersは、OHSUでの家庭医療研修中にこの地と出会い、卒業後10年以上に渡って地域医療を支え続けています。
WWCスタッフとの顔合わせの後、出張診療所であるJoseph ClinicをDr. Powersに案内していただきました。

Winding Waters Clinicスタッフと

Winding Waters Clinicスタッフと

Joseph Clinic

Joseph Clinic

研修4日目(エンタープライズ→ポートランド)

ワローワ郡の医療において重要な役割を担うWinding Waters ClinicとWallowa Memorial Hospitalを見学しました。
これらはOHSUが直接運営に携わる施設ではありませんが、長年にわたりパートナーシップを築いており、研修医をはじめ様々な職種の若者たちがポートランドから地域研修に訪れます。
病院と診療所は同じ敷地にありますが、運営主体がそれぞれ異なります。一方、医師は病院・診療所の両方で勤務することができ、1カ月の間に病院と診療所を行き来することができます。外来診療は診療所で行い、救急・入院は病院で行われています。

Winding Waters Clinic

エントランス

エントランス

待合室

待合室

中央材料室

中央材料室

限られた人数で効率良く医療を提供するため、多職種によるチーム医療が徹底されています。スタッフ間のコミュニケーションを円滑にするため、TeamSTEPPSと呼ばれる手法を取り入れていました。これはスタッフそれぞれのパーソナリティを4つのカラーに分類し、その特性に応じた役割を与えるものです。
次に、来院の難しい患者には往診も行っていますが、場所によっては往復で3時間程度を要することがあります。このような時は、看護師等が患者様を訪問し、医師は遠隔診療システムにより診療所にいながら診察を行っているとのことで、地域のニーズに合わせてテクノロジーが活用されていました。
また、現在は歯科治療の充実や予防医療に力を入れているとのことで、地域全体を考えた活動を心掛けていることが伺えました。

Wallowa Memorial Hospital

エントランス

エントランス

スタッフステーション

スタッフステーション

1階建て小規模病院で、ベッドは20床あります。病室は広い作りで、家族宿泊用のベッドを備えた個室も見られました。
多職種(医師・薬剤師・リハビリ・看護師・ケースワーカー等)による病棟チームラウンドが定期的に行われており、今回の研修参加者もこれに同行させていただきました。

研修5日目(ポートランド周辺)

Lecture ‘Family Medicine’

講義の様子

講義の様子

OHSU FMの本拠地Emma Jones Hallにて

OHSU FMの本拠地
Emma Jones Hallにて

OHSU FMの前Chairmanであり、Professor Emeritus(名誉教授)のDr. John Saultzによる、家庭医療に関する講義を受けました。Dr. Saultzは、家庭医療学が現在の地位を確立するまでの歴史を踏まえ、米国の医療においていかに重要な分野であるかを熱心に説明されました。家庭医療学に対する情熱と誇りを感じられる、迫力の講義でした。

Scappoose Clinic

Scappoose Clinicは、ポートランド市街から自動車で北へ30分程度の距離にある住宅地にあります。通院する外来患者様は1日120人程度で、患者様1人あたりの診察時間は平均30分程度と、日本に比べゆとりがあるようです。

エントランス

エントランス

見学風景

見学風景

この診療所には、スタッフ個人が業務改善のアイデアや問題点を投書する仕組みがあり、これをもとに業務改善のミーティングが定期的に行われています。このミーティングには職種や役職を問わず誰でも参加することができるとのことで、職場への帰属意識を高めるのに有用な取組みとして、研修参加者の関心を集めていました。

研修6日目(ポートランド周辺)

Lecture ‘Practice Based Research Network’

望月医師による講義風景

望月医師による講義風景

当協会の医師であり、現在OHSUのフェローとしてポートランドに滞在し研究活動を行っている望月崇紘医師より、OHSUの協力のもと行っている研究活動について講義を受けました。通常の研究は、単純な疾患を対象として高機能病院で行われるものが多く、必ずしも地域医療の現場で活用することができないという課題があるため、当協会ではプライマリケアを中心とした外来診療を実践する医療者達で研究ネットワークを構築しています。

Lecture ‘Practice Based Research Network’

米国の医療保険システムについての講義の様子
米国の医療保険システムについての講義の様子

米国の医療保険システムについての講義の様子

OHSU FMスタッフによる、米国の保険医療制度に関する講義を受けました。患者が加入している保険により受けられる検査や治療の範囲が異なるうえ、同じ治療内容であっても、病院により設定された医療費が異なります。医療費の請求業務は複雑を極め、多くの事務スタッフが必要ですが、これにより人件費がかさみ、さらに医療費が増大しているという問題が浮き彫りになりました。

OHSU FM関連主要施設ツアー

山下大輔先生

山下大輔先生

丘の麓へつながるロープウェー

丘の麓へつながる
ロープウェー

ツアーの様子

ツアーの様子

OHSUのメインキャンパスはMarquam Hillと呼ばれる丘の上に建てられており、約15,000人の職員が勤務しています。OHSU FM所属の日本人医師である山下大輔先生とOHSU FMに関連する主要施設を巡り、説明を受けることができました。

Dinner with OHSU FM Staffs

今回の研修に携わってくださったOHSU FMスタッフの方々とのディナーにて。
今回の研修に携わってくださったOHSU FMスタッフの方々とのディナーにて。

今回の研修に携わってくださった
OHSU FMスタッフの方々とのディナーにて。

研修7~8日目(ポートランド→成田)

帰国

今後も米国の地域医療の現場をより多くの方に体験いただけるよう、次回の開催を検討して参ります。海外の医療現場にご興味のある方、地域医療の魅力を再発見したい方、次回の開催を楽しみにお待ちください。

【スケジュール】

June AM PM
June. 1 Sat
1 Sat

ポートランド空港着  
OHSUスタッフとの顔合わせ(ランチ)  

成田空港発
June. 2 Sun
2 Sun フィールドワーク (Multnomah Falls, Latourell Falls, Vista House) フィールドワーク (Hood River, Mt. Hood, Timberline Lodge)
June. 3 Mon
3 Mon Enterprise(オレゴン州北東部)へ移動 訪問地域に関するオリエンテーション
Joseph Clinic見学
Winding Waters Clinicスタッフとの懇親会
June. 4 Tue
4 Tue Winding Waters Clinic見学
Wallowa Memorial Hospital見学
多職種による病棟チームラウンド参加
Winding Waters Clinicに関する講義
射撃場見学
ポートランドへ移動
June. 5 Wed
5 Wed 講義「家庭医療について」 Scappoose Clinic見学
BBQ(OHSUスタッフBenさん宅にて)
June. 6 Thu
6 Thu 講義「PBRN(診療の質向上に関する研究)」
講義「米国の医療保険システムについて」
OHSUキャンパスツアー(Portland Aerial Tram, OHSU Hospital, South Waterfront Clinic)
米国の医療についてのQ&A
フィールドワーク
ディナー(OHSU FMスタッフとの夕食会)
June. 7 Fri
7 Fri ポートランド発  
June. 8 Sat
8 Sat 成田空港着